20201022

これは様式とその崩壊という二つが薄膜を隔てて並立しているのだという説明を日々の中に見いだすようになった。どのように様式、テーマ、志向性が積み上げられてきたのかという歴史的背景に関するプレゼンテーションがあり、その後に「ではここで壊してみましょう」というデモンストレーションが行われる。クリストファー・ノーランの新作 TENET は隣り合わせ(時間的にまったく厳密に同時に存在するという前提)の平穏と危機が溶け合っていき渾然一体となった結果、「新しい日常」が提供される、と見ようによっては極めて今日的な作品だった。観る前からこれからスクリーン上でどんなことが起きるんだろう? と緊張感はあり、観賞後には果たしてこれまでにどうやってきてこの映画が「発生」しそれに対して自分の身体を差し出す体験としての「鑑賞」が起きたんだろうと遡って考えるような感じだった。

事実の前に説明があるからまずは説明を読む、という順序だと実用的には何も成し遂げられない。日記を書くために日記の書き方を読み、それを読むための読み方を学び……

「達成したい目標」と「避けたい未来」は分かち難く結びついているという不合理な信念、思い込みが憂鬱の原因かもしれない。そのように書かれると同時に崩壊する。