2020年の映画

  • TENET

手元に残したメモにはこうある。「2020年9月18日。映画館で公開初日のTENETを観る。14時の回だ。上映前、入場列に並んでいると、劇場内から酸素ボンベを身につけた奇妙な風体の男が後ろ向きで歩いて背中から出てきた。観賞後にわかったことだが、どうもあれは未来から過去に向かって逆行してきた僕だったらしい。」

 

  • 羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来

NARUTOドラゴンボールをはじめとするジャンプアニメの正統な後継。

 

Amazon上で監督・出演が「わからない」になっているのは興醒めするが、ストーリーテリングについてはファウンドフッテージのあり方として理想と思える。

 

  • パラサイト 半地下の家族

2020年というより2019年の映画として印象に残っている。パラサイト、天気の子、ジョーカーという並びがまばゆい限りだ。

末尾に置かれたハリウッド映画然としてあろうとするがあまりに辿々しいミランダ警告からは、韓国映画人の複雑な謙虚、羞恥、躊躇いを感じた。

あとは黒沢清荒木飛呂彦リスペクトを感じたが、そこに言及してる評が少ない。ジョジョ五部のエピローグ「眠れる奴隷」が直接参照されてると思ったが?

 

  • スパイの妻

蒼井優の「お見事!」がよかった。

 

エンディングの爽快感がすごかった。

 

  • 1917 命をかけた伝令

直接的には古代ギリシアにおけるマラトンの戦いとその勝利をアテナイに伝えたエウクレスの福音の故事を参照しており、主人公がブラックアウト後に見せる驚くべき身体性の高さも古代ギリシア的に理想化されているように見える。

最後後頭部にあるべき傷も修復してなかった??

ギリシアのみならずヘブライやアフリカ系・シーク教徒兵士などを包摂したイギリス軍の多人種性も明確に描写している。ここら辺について近年の史学的説明は『現代の起点 第一次世界大戦 第1巻 世界戦争』に詳しいがメンデスが英語で何を参照したのかはプロパーでないのでよく知らん。

とはいえ、政治的配慮がお仕着せに見えてしまうのは、歌とエスニシティと兵士個人の精神性と映画的美学が素朴に結びつきステレオタイプを再生産しているように見えるから。2020年に入っても国民国家って脱構築されないんだなあ!

そこら辺の視角はダンケルク最後のカット、伏せられた眼の方がはるかに鋭かったと思う。

まあそうは言ってもモダンな宗教絵画っぽいレイアウト、色彩、質感の美術は実際かなり斬新だったしWWIってまだまだ神話化していくんだなあ!と感慨深かった。

あとびっくり系の演出をやめろ!

 

  • BURN THE WITCH

漫画読み切りとしてはちょうどいい分量も映画だと物足りなく感じる。

 

これはテレビアニメからしてそうだけど、台詞絶叫系の音響がキツかった。霹靂一閃で鳴る超低音効いた四つ打ちが気持ちよかった。

 

フェイク感が強すぎてハマれなかった。

 

高トルクパックが登場する「テリトリィ脱出」パートの演出はロボットアニメ史に刻むべきである。

 

  • 犬鳴村

意外と心に残る質感はあるものの総じてわざわざ劇場に観に行くほどのものではなかった。