『文体の舵をとれ』練習問題(1)「文はうきうきと」問2

一段落くらいで、動きのある出来事をひとつ、もしくは強烈な感情(喜び・恐れ・悲しみなど)を抱いている人物をひとり描写してみよう。文章のリズムや流れで、自分が書いているもののリアリティを演出して体現させてみること。

 

 しかしまあ。あの店員のめんどくさそうな顔よ。俺が口にした瞬間は愕然としてたようにすら見えた。さあATMはどこだろう。どこだろうか。こうなるとキャッシュカードが使えるのかどうかも怖くなってくる。さすがに口座に金はあると思うが。千円ぐらい持ってると思ったんだけどなあ。接客マニュアルと教育はしっかりしてそうな店だったけど持ち合わせが足りずクレジットカードが使えないと理解してなかった客の対応まではカバーしてないんだなあ。警察沙汰にもなりかねない事態を店員の感情でコントロールしたわけだ。あいつのあの顔、財布のないこの馬鹿。感情労働、あんじょうよろしゅう。身分証返ってきてほしいなあ。財布忘れた上に身分証見られたの恥ずかしすぎるな。この数年で一番恥ずかしい。もうあの店は二度と行けないな。コンビニあった。ATMあった。よかった。