文体の舵をとれ

『文体の舵をとれ』練習問題(6)「老女」二作品目

二作品目:一作品目と同じ物語を執筆すること。人称──一作品目で用いなかった動詞の人称を使うこと。時制──①〈今〉を現在時制で、〈かつて〉を過去時制、②〈今〉を過去時制で、〈かつて〉を現在時制、どちらかを選ぶこと。 彼女は検索の末、ついに中心に辿り…

『文体の舵をとれ』練習問題(6)「老女」一作品目

今回は全体で一ページほどの長さにすること。短めにして、やりすぎないように。というのも、同じ物語を二回書いてもらう予定だからだ。テーマはこちら。ひとりの老女がせわしなく何かをしている──食器洗い、庭仕事・畑仕事、数学の博士論文の校正など、何で…

『文体の舵をとれ』練習問題(5)「簡潔性」

一段落から一ページ(四〇〇〜七〇〇文字)で、形容詞も副詞も使わずに、何かを描写する語りの文章を書くこと。会話はなし。 要点は、情景や動きのあざやかな描写を、動詞・名詞・代名詞・助詞だけを用いて行うことだ。 時間表現の副詞(〈それから〉〈次に…

『文体の舵をとれ』練習問題(4)「重ねて重ねて重ねまくる」問2

語りを短く(七〇〇〜二〇〇〇文字)執筆するが、そこではまず何か発言や行為があってから、そのあとそのエコーや繰り返しとして何らかの発言や行為を(おおむね別の文脈なり別の人なり別の規模で)出すこと。やりたいのなら物語として完結させてもいいし、…

『文体の舵をとれ』練習問題(4)「重ねて重ねて重ねまくる」問1

一段落(三〇〇文字)の語りを執筆し、そのうちで名詞や動詞または形容詞を、少なくとも三回繰り返すこと(ただし目立つ語に限定し、助詞などの目立たない語は不可)。(これは講座中の執筆に適した練習問題だ。声に出して読む前に、繰り返しの言葉を口にし…

『文体の舵をとれ』練習問題(3)「追加問題」問2

書いてみた長い文が、単に接続詞や読点でつなげただけで構文が簡単になっているなら、今度は変則的な節や言葉遣いをいくらか用いてみよう(ヘンリー・ジェイムズを参照のこと)。すでに試みたあとなら、ダーシなどを駆使してもっと〈ほとばしる〉文を書いて…

『文体の舵をとれ』練習問題(3)「追加問題」問1

最初の課題で、執筆に作者自身の声やあらたまった声を用いたのなら、今度は同じ(または別の題材について、口語らしい声や方言の声を試してみよう──登場人物が別の人物に語りかけるような調子で。あるいは先に口語調で書いていたなら、ちょっと手をゆるめて…

『文体の舵をとれ』練習問題(3)「長短どちらも」問2

半〜一ページの語りを、七〇〇文字に達するまで一文で執筆すること。 折に触れ、演奏において何が本質的か、という話題に行き着きがちな我々の中で僕の主張と言えば、ステージの上に立つ段になると技術的な問題や緊張ですら問題ではなくなり、楽器の機械的な…

『文体の舵をとれ』練習問題(3)「長短どちらも」問1

一段落(二〇〇〜三〇〇文字)の語りを、十五字前後の文を並べて執筆すること。不完全な断片文(間投詞や体言止め)は使用不可。各文には主語(主部)と述語(述部)が必須。 私は熟れたバナナを食べていた。バナナは腹の足しにならなかった。何を食べたらい…

『文体の舵をとれ』練習問題(2)「ジョゼ・サラマーゴのつもりで」

一段落〜一ページ(三〇〇〜七〇〇文字)で、句読点のない語りを執筆すること(段落などほかの区切りも使用禁止)。 そろそろ店のことについてもなにか申し上げておいた方がよさそうですがありゃもうダメですね全然ダメ店主のやる気がないわけなんですよそり…

『文体の舵をとれ』練習問題(1)「文はうきうきと」問2

一段落くらいで、動きのある出来事をひとつ、もしくは強烈な感情(喜び・恐れ・悲しみなど)を抱いている人物をひとり描写してみよう。文章のリズムや流れで、自分が書いているもののリアリティを演出して体現させてみること。 しかしまあ。あの店員のめんど…

『文体の舵をとれ』練習問題(1)「文はうきうきと」問1

一段落〜一ページで、声に出して読むための語り〈ナラティヴ〉の文を書いてみよう。その際、オノマトペ、頭韻、繰り返し表現、リズムの効果、造語や自作の名称、方言など、ひびきとして効果があるものは何でも好きに使っていい──ただし脚韻や韻律(meter、定…