アウティング

松岡宗嗣『あいつゲイだって:アウティングはなぜ問題なのか?』柏書房、2021年。

アウティングとは、「本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露すること」。ここでの「性のあり方」とは、主に性的マイノリティ当事者の性的指向(恋愛や性的な関心がどの性別に向くか、向かないか)や性自認(自分の性別をどのように認識しているか)などを指す。

 

数年前、私は性的指向を誰にも明かさないセクシャルマイノリティだったが、あることをきっかけにYと秘密を共有した。その日以降も私はかわらず秘密を保ち続けたが、知らぬ間に私の性的指向に関する情報はそれとなく私の周囲に共有されていた。論理的に考えてYにアウティングされたとしか考えられない。

もちろん、私の周囲の人間に対して「私の性的指向に関して何か知らないか?」という質問をすることはできなかった。その質問は発した時点でカミングアウトに等しい行為だからだ。

アウティングに関する「答え合わせ」ができたのは先週のことだ。私は先週カミングアウトをした。数年前の出来事を今更言及するのは、私にとって、カミングアウトとアウティングがほんの最近の出来事だからだ。

私の性的指向を察していた知り合いの数から言って、おそらく最初のアウティング以降、秘密は伝言ゲームのように広まったのだろうと想像しているが、そのことを殊更に論うつもりはない。唯一はっきりしている火元として最初のアウティングを行なったYを糾弾できればそれでいい。

 

Yに連絡を取ったが、現在に至るまで無視されている。私からアウティングについて問い質したところで、無責任にも無視するであろうことは想像に難くない。

 

怒りや絶望、悲しみなどネガティブな感情はない。ただ純粋に殺し合いがしたい。