指のみこ

きみの手を食べたらきみの書く文字や描く絵、出す音、作る料理をぼくもできるようになるかな。きみが死んだらきみの五本の指を、五人の友人と分け合って、各々食べてきみと生まれ変わる。
残りの指は親族に返す。

きみの指はだれかを殺したことある?
感触は今も残ってる?

怨念を怨念らしく背負って、朝起き上がれないぐらいの闇を眠ってる。闇=夢はぼくの知らない人と繋がってるから一人じゃないけど、ぼくの知らない人は知らないから出会えない。
出会えない人の傷だってぼくのものだ。夢なら繋がってるから。

きみは夢を見なかったから、墓地に眠ってからも何も見ないだろう。ぼくがきみにしてやれることはない。

わたしたちはまだじゅうぶん可能性の残る、ほど、満ちていると言ってください。できるだけ早口で、光速で、ぼくにまで伝えてください。墓に入るまでもうまもなく。おともなく。お供泣く?

イエイ。

胃の中に入ったきみの指がエイリアンのように腹を切り裂いてこの世に生まれ、宇宙の言葉を書き出す夢を見るかもしれない。そのようにきみの指を孕みたい。