インプレッション・ファースト

今の時期に自分がやるべきことは一人でも多くの人と話すことだと考え、そのように振る舞っている。うまくいかないことも多いが、幸いにも友達はずいぶんと増えた。みんなありがとう。

僕のような生き方をしている人のクリシェに「第一印象がすべてだ」というものがある。確かに場数を踏んで、人を見る目を養っていくと結局第一印象から大きく外れたことをする人は少ない、というのももっともらしく思えてくる。

しかし「第一印象がすべてだ」という割り切り方からはどこか冷たい、そして独善的な排除の匂いを感じる。僕はまだ人を見る目を養っている途中であり、ひと目見ただけで資質を見抜くような離れ業はできない。また固定的な人間の見方を好まない。多かれ少なかれみんな未熟な存在なのだから、未来に希望を見出したっていいでしょう?
これは僕自身がそう見られたいという甘えなのかもしれないが。

一昨日もある男と知り合った。声が大きい、よく喋る、というか話が長いというのが第一印象だった。マイクと顔の距離が近いのだろうか。次に来る印象は純真だった。なにやら僕にはわからない絵本、児童文学の魅力について深夜まで熱弁している。
初日の感想は深夜一時まで喋り倒されて疲れてしまった、というものだった。話を遮るのも悪いと思って気のない相槌は打っていたが、日付が変わる頃には寝たかった。

二日目の印象はずいぶん違うものになった。一日目には掘り下げられなかった夢の話について色々と聞き出すことができた。まだ何ができるかはわからないが、どうなるかわからないこそ想像が広がって楽しい。いい話を聞けた。

三日目の今日、昨日は昨日で迷いながら喋って、本当の夢とは違うことをつらつら述べてしまったというDMをもらった。まあそういうこともあるだろう。

結局シンガーソングライターとしてやっていきたいらしい。結構なことです。
現在の印象だと彼がシンガーソングライターとして大成するのは僕が小説家としてトップに辿り着くのと大差ない可能性のように思える。つまりまだ諦められないということだ。

同世代には既に成功者が何人もいる。そのことを僕は知っている。少しの妬みや嫉みは覚えるが、まあいいさどうせ僕が全部食うんだから今のうちにみんなデビューしておくといい、と構えている。馬鹿なのかもしれない。

あと大事なのは金の話だった。みんなお金がないのは変わらない。これから給料が上がる見込みがないという悲観も共有している。
少なくともiPhone一台、MacBook一台、ギター一本は所有しているのだから、それで戦うしかない。
ここは平和な戦場。いつ死ぬかもわからない中、みんな呑気に夢を叶えたり叶えなかったりする。
気が向いたら一緒に戦おう。敵と。テキトー。

暗いベッドに繋がれた己の姿を数年越しに思い出すと、彼が思い出の中から見返してきた。
「そんな目で見るなよ」
「……」
「わかるよ、つらいってやつ」
「……」


僕は、見ている。
それは変わらない。