カプセル

僕の思いの丈を錠剤に閉じ込めて君に与えるのがかつての目標だった。必要な時に服用してほしかった。
今はどうだろう。思いとか僕のとか、あまり興味がなくなったかもしれない。
君だって大事ではないよ。

いくつかのアイデアを必要な文字数で「君」に服用させることにはまだ少しばかりの執着があり、でも言ったように「君」そのものへの執着自体は虚妄だったと思うし簡単に捨て去りたい、という訳でほとんど捨て去ったけど未だに夢に見る「君」とか色々な人の、人らしき影が擦れる音、夢から覚める、もう「君」ではないな、「だれか」でいいのか、いやむしろ「君ら」にあててかな、まだ文章を用意していてカプセルっていうの錠剤っていうの注射その他の形態で向かわせる情報がある、と信じなければもはや自分ひとりの存続すら危ういほど無気力に陥り、まだ文章を用意しているだけなんだと僕に言い聞かせる、この「僕」に、元々「君」にあてたすべての文章が「僕」のために書かれたものだったと今更ながら認めよう、だれに対して? まあ僕でも君でもない、街や星でもない、犬ぐらい、犬ぐらいなら許せそうな気がするから強いて言うなら犬に誓って、犬なんて飼ったことないけど、キミヘノシューチャクを捨て去ったと少し前に書いたけどこれは大体ほんとう、犬に誓って、いつか千年後に君と僕と友達らの血族があまさず滅んだその地上と天空に文字列それ自体が何の意味もなく蒐集されるその時空を目指してインパクトを与える、「この例題なんか二十一世紀日本人って感じで面白いよね」と笑われながら語学の教科書に収録されるぐらいのインパクト、そう我々ながら、やり遂げる先が僕には見えてくる、またしても虚妄だが、いいんだよ書ければ、そして読めれば、意味をこえて、千年をこえて文章があれば。